スマホ119 専務の現場ノート
専務ブログ現場から、次の119へ。
壊れたiPhoneを自分で直したあの日から、修理ひと筋で11年。いまは専務として全店舗の現場を回り、仲間の技術と心に火をつけるのが仕事です。スマホ119を責任持って引っ張っていく覚悟と、現場で起きているリアルを、そのまま書いていきます。
- 修理歴 11年たたき上げ
- 全 8 店舗現場を統括
- 育てる仲間と技術
背中で教えて、言葉で渡す。
こんにちは、専務の富村レオです(^^)
改造図鑑、第18回。今日はバーチャルボーイです。
この連載で扱う中でも、間違いなくいちばんの変わり種。
そして修理の世界では、ある持病で有名な機種でもあります。

1995年、赤くて立体な機械
発売は1995年7月21日。価格は15,000円。
僕が生まれる2年前です。
まず、形が変わっています。携帯ゲーム機なのに、持ち歩けません。
三脚のようなスタンドの上に本体が乗っていて、そこに顔を押し当ててのぞき込む。ゴーグルというより、のぞき箱に近い。
そして画面は赤と黒だけ。赤色LEDを使っているので、それ以外の色が出せません。
でも、3DSの回で書いた裸眼立体視とは比べものにならないくらい、立体感は本物でした。
なぜ立体感が本物なのか
仕組みが根本的に違うんです。
3DSは1枚の画面を左右の目に振り分けていました。だから正面から見ないと崩れる。
バーチャルボーイは、左右にそれぞれ別の映像装置が入っています。左目には左目用、右目には右目用を、完全に独立して見せている。
つまり、今のVRゴーグルとまったく同じ考え方なんですよ。

1995年です。VRという言葉が一般に広まる20年以上前に、任天堂はこれを家庭用として出していた。
なのに、売れませんでした
理由は、たくさんあります。
- 赤と黒だけで、目が疲れる
- 持ち歩けないのに、携帯機として売られた
- のぞき込む姿勢が首と肩にくる
- 誰かと一緒に見られない(1人でのぞくしかない)
- ソフトが少なかった
とくに「一緒に見られない」は大きかったと思います。
DSやPSPの回で書いたとおり、当時のゲームは集まって遊ぶものでした。画面を隣からのぞける、というのが前提だった。
バーチャルボーイは、その文化と正面からぶつかったんですよね。
販売期間は1年もありませんでした。
本題:画面が消える、という持病

ここからが修理の話です。
今、バーチャルボーイを中古で手に入れると、かなりの確率でこの症状に当たります。
- 片目だけ映らない
- 映像がちらつく・線が入る
- 叩くと一瞬映る(そして、また消える)
そして原因も、ほぼ1つに特定されています。
映像装置につながるケーブルの、接着が剥がれている。
なぜ剥がれるのか
左右の映像装置と基板は、薄いフィルム状のケーブルでつながっています。この連載でおなじみのフレキケーブルです。
問題は、そのつなぎ方でした。
この時代、フィルムケーブルを基板に接続するのに導電性の接着剤で貼るという方法が使われていました。はんだ付けではなく、貼っている。
そして、この接着剤が30年かけて劣化します。
- 接着力が落ちて、浮いてくる
- 浮くと接触不良になり、映らなくなる
- 叩くと一瞬つながるので、一時的に映る
「叩くと映る」という症状は、接触不良の典型です。これはスマホでも同じで、うちの店でも「押さえると映る」という相談はよくあります。だいたいケーブルかコネクタです。
直し方は、意外と地味です

有名な対処法は、剥がれた接着をやり直すというものです。
大まかには、
- 古い接着剤を、慎重に取り除く
- ケーブルと基板の接点を掃除する
- 熱と圧力をかけて、貼り直す
この3番目が肝で、温度と圧力の加減がシビアです。熱が足りないとくっつかない。かけすぎるとフィルムが縮んで終わります。
正直に言うと、これはこの連載で扱った中でも上位の難易度です。
しかも、失敗するともう部品が手に入りません。生産期間が1年未満なので、交換用のパーツなんて市場にほぼ存在しないんですよ。
だから僕としては、大事な1台なら自分でやらないでほしいです。ここは正直に書いておきます。
この「貼る接続」は、今も生きています
面白いのは、この接続方法が過去の技術じゃないということです。
今のスマホやテレビの液晶でも、フィルムケーブルを熱と圧力で貼る接続は普通に使われています。技術としてはずっと進化していますが、考え方は同じ。
だから、うちの店でも似た症状を見ます。
- 画面の端だけ表示がおかしい
- 特定の角度で押すと直る
- ちらつきが出る
こういうとき、僕らはまず接続部を疑います。30年前のバーチャルボーイで起きていることと、原理は変わっていません。
古い機械を触っておくと、今の機械の故障が読めるようになる。この連載でずっと言いたかったのは、こういうことなんですよ(^^)
そして、目のこと

ひとつ、真面目な注意を書いておきます。
バーチャルボーイには当時から「長時間続けて遊ばないように」という注意が付いていました。
赤と黒だけの強い光を、至近距離で、両目で見続けるわけです。目への負担はかなりのものです。
今、中古で手に入れて遊ぶ人も、休憩を入れてください。とくにお子さんには長時間やらせないほうがいいです。
これ、今のVRゴーグルやスマホでもまったく同じ話でして。
うちの店でも「最近スマホを見ると目が疲れる」という相談を受けることがあります。多くは画面が明るすぎるのと、近すぎるのが原因です。
明るさを下げて、少し離す。それだけでかなり変わります。この連載で書いた3DSの立体視と同じで、目に無理をさせる機能は、無理をしない使い方でカバーするのがいちばんです。
失敗作、と言い切れない理由

最後に。
バーチャルボーイは、商業的には完全な失敗でした。それは事実です。
でも、間違っていたとは思えないんですよ。
左右独立の映像装置で立体を見せる。頭を固定して、視界を覆う。これ、今のVRがやっていることそのものです。
足りなかったのは、アイデアじゃなくて周りの技術でした。
- 軽くて高精細な画面がなかった(だから赤色LED)
- 頭の動きを追う技術がなかった(だから固定)
- 処理能力が足りなかった
PSP goの回で書いたのと、まったく同じ構図です。正しくても、早すぎると届かない。
この連載を書いていて思うんですが、負けた機械ほど、未来を先に見ていることが多いんですよね。
だから僕は、古い機械を開けるのがやめられないんだと思います。そこに、次に来るものの原型が入っているので(^^)
スマホ119では、古い機種の修理・買取の相談も受けています。「どこも直してくれなかった」ものがあれば、いちど見せてください。
次回はゲームボーイミクロとゲーム&ウオッチ。極端に小さい機械たちの話をします。
スマホ119は沖縄県内に8店舗を構えるスマホ・iPhone修理店です。スマホだけでなく、ゲーム機(Switch・PS・3DS・PSP等)の修理・買取も承っています。
画面割れ・バッテリー・水没・データ復旧など、お気軽にご相談ください(^^)
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