スマホ119 社長の手記
社長ブログ視点と、本音と、物語。
修理の話より、その奥の話を。息子の割れたiPhoneを自分で直した日から、沖縄で店を続けてきた僕が、現場で考えたこと・好きなモノづくりのこと・うまくいかなかった日のことまで、飾らずに書き残していきます。
手を動かした分だけ、書ける。
皆さまこんにちは!スマホ119の富村です^^)
土曜日なので、今日は趣味の回です。5年前の5月、パーツを一つずつ集めて組んだミニベロを、工具棚の前で何度も眺めていた日の話です。
2021年5月14日、北谷町。
タイヤの小さい、いわゆるミニベロです。フレームは明るい水色で、革サドル、ハンドルは銀色。銀色の泥よけ。ボトルが一本ささっています。
フロントはシングルにしてRを7段にしました。金属の棚には壁一面。黒い箱がずらっと並び、機械や道具がぎっしり。
その自転車をスタンドに載せて、棚の前に立てました。いいなあ、この雑然とした整い方(笑
「ミニベロ」は、小さいという意味の「ミニ」と、フランス語で自転車を意味する「ヴェロ」を合わせた呼び名です。名前からして、ちょっとかわいい。水色のフレームには、その呼び名がよく似合うと思っています。
パーツを一つずつ集めて組んだ
この自転車は、パーツを一つずつ集めて、自分で組みました。フレーム、ハンドル、サドル、ギア、クランク。どれも自分で選んで、自分の手で付けています。フロントをシングル、後ろを7段にしたのも、自分で決めた組み方です。ただ買った自転車とは、愛着の重さがまるで違います。
この日は、その自転車のまわりを、ぐるっと一周しながら眺めました。正面から見て、横から見て、しゃがんで後ろの輪を見て。自分で組んだ物は、一方向から見ただけでは、なかなか安心できません。
ミニベロは、タイヤが小さいぶん、こぎ出しが軽くて小回りがききます。家の中に置いても場所をとらないし、車にも積みやすい。大きな自転車とは別の、気軽さのある自転車です。
水色のフレームは、棚の黒や銀の中に置くと、そこだけ明るく見えました。工具と機械に囲まれた中に、一台だけ空の色。この組み合わせが、今見ても好きです。
横から、後ろの輪まで
横に回ると、前のギアから後ろのギアまで、チェーンが一本、まっすぐ通っています。
フロントをシングルにすると、前の変速機がいらなくなって、変速は手元の一か所だけになります。ハンドルまわりも、チェーンのまわりも、すっきりする。
いちばん苦労したのは、クランク
組んでいて、いちばん苦労したのはクランクです。ペダルを付ける、あの腕の部分です。
このクランクは海外製で、たしかフランスのものだったと思います。デザインが気に入って、これを使うと決めて買いました。
自転車のペダルは、ふつう右が正ネジ、左が逆ネジです。左だけ逆なのは、こいでいるうちに左のペダルが緩んでこないようにするためです。
ところが、このクランクは、右側が逆ネジで切ってあったんです。そのままでは、ふつうの右のペダルが付かない。そこで、タップで正ネジに切り直して、ようやくペダルを取り付けました。
なので、このクランクが付いた自転車は、日本ではあまり見かけないはずです(笑 自分でネジ山を切った所があるぶん、この一台には、ほかの自転車にない思い入れがあります。
気に入った形の部品を選ぶと、ときどきこういう回り道が待っています。それでも、手を動かして一つずつ合わせていく時間が、モノづくりのおもしろいところだと思っています。
しゃがんで、後ろの輪に寄りました。
細いスポークが、中心のハブに向かって集まっています。その横に、7段のギア。歯の一枚一枚まで、くっきりしています。
遠くから眺めているときは「水色のかわいい自転車」なのに、寄ると、細かい部品がぎっしり詰まった機械の顔になる。自転車は、近くで見るほどおもしろい乗り物だと思います。
ペダルを手で回すと、チェーンが前のギアから後ろのギアへ力を運んで、後ろの輪がからからと回り出す。人の力だけで動く機械の中で、自転車ほど仕組みがまる見えの物は、なかなかありません。どこが回って、どこが止まっているのか、全部目で追える。だから組むのも、眺めるのも楽しいんだと思います。
ハンドルとサドル
今度は、上からハンドルをのぞきこみました。
銀色のハンドルは、先が下へ曲がったドロップ型です。握る場所をいくつも変えられるのが、この形のいいところ。小さなタイヤの自転車に、ドロップのハンドル。この取り合わせが、僕は好きです。
ハンドルの銀色と、泥よけの銀色。水色のフレームに、銀を二か所だけ。色の数をしぼると、自転車はぐっとすっきりします。そこに茶色い革のサドルが一つ入ると、急に落ち着いた顔になる。この色の取り合わせも、気に入っている所です。
夕方はステーキ、夜にもう一度
夕方は、鉄板のステーキでした。
鉄板のステーキは、皿にのってからも、しばらくじゅうじゅうと音を立てています。あの音を聞くと、それだけで夕方のごはんらしくなる。自転車を眺めた午後のあとの、夕方のひと皿です。
熱い鉄板に肉が二切れ、じゃがいもと野菜を添えて。沖縄は、ステーキの店が多い土地です。戦後のアメリカの食文化がそのまま根づいて、今では地元の人間にとっても、ごちそうの定番になっています。
そして夜。もう一度、棚の前の自転車のところへ戻りました。
今度はサドルの後ろから、ハンドルのほうを見通すように。茶色い革のサドルに、水色のフレーム、ボトルが一本。昼と同じ自転車なのに、夜の明かりの下だと、また少し違う顔でした。
昼に何度も眺めたのに、夜になっても、まだ見に行ってしまう。自分で組んだ自転車は、それくらい気になる物なんですよね(笑
5年たった今でも、この日の自転車を思い出すと、また何か一台組みたくなります。パーツを一つずつ探して、手で付けて、最後に立たせて眺める。あの順番そのものが、好きなんです。
自分で組んだ自転車は、同じ物が二台とありません。パーツを探したことも、クランクのネジを切り直したことも、見ればすぐに思い出せる。だから何度でも、まわりを回って眺めたくなるんです。
一方向から見て、決めつけない
全体で見て、横から見て、寄って見て、上から見て。一方向からの景色だけで、物を決めない。これは、現場を見るときの考え方でもあります。
第11章「現場は、最高の教科書」の中で、会議室で作った手順書が、現場に出した初日に止まった話を書きました。会議室から見えていた景色は、一方向だった。現場に出て、角度を変えて見て、初めて見えるズレがあったんです。
人の話を聞くときも、同じだと思っています。最初に聞いた一言で、決めつけない。別の角度から、もう一度、確かめる。全体の印象と、近くで見た印象は、案外ちがうものです。
お店でも、同じことが言えます。新しいやり方を決める時も、店長の話だけ、数字だけで決めずに、スタッフの声、お客様の待ち時間、作業台の様子と、いくつかの側から確かめる。正面から一度見ただけでは分からないことが、横から、後ろから見ると見えてくる。自転車のまわりを一周したあの日の見方は、そのまま仕事の見方でもあります。
道具の定位置が、迷いを減らす
もうひとつ。工具棚の話です。
工具も、自転車の部品も、置き場所が決まっていれば、迷う時間が減る。迷う時間が減ると、手を動かす時間が増えます。棚と箱に、物が定位置で収まっている部屋。これは、僕が暮らしの中で、いちばん効くと思っている段取りです。
使ったら、決まった場所に戻す。それだけで、次に使う時に探さずに済みます。
スマホの中も、実は同じです。どこに何があるか分かるようにしておくと、見たい物がすぐ出てくる。5年前の5月のこの一日も、日付ですぐにたどり着けました。
次回も趣味の回です。海の見えるコンテナの宿で、カニを焼いた日の話です。
スマホの中の写真が気になる方は、お近くの店舗へお気軽にどうぞ。
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