スマホ119 社長の手記
社長ブログ視点と、本音と、物語。
修理の話より、その奥の話を。息子の割れたiPhoneを自分で直した日から、沖縄で店を続けてきた僕が、現場で考えたこと・好きなモノづくりのこと・うまくいかなかった日のことまで、飾らずに書き残していきます。
手を動かした分だけ、書ける。
▼ この記事を、ショート漫画にしました(タップで再生・音が出ます)
皆さまこんにちは!スマホ119の富村です^^)
今月は、去年書いた自分の本を1章ずつ開いていく月にしています。今日は第2章。タイトルは『「できる人」に頼るのをやめた日』。
書いていていちばん恥ずかしかった章かもしれません汗

エースが、たった1日休んだ
当時、うちにはタカシ(仮名)というエースがいました。
受付、見積り、部品の在庫確認、難しい修理、そしてクレームの最終対応。ぜんぶできる。しかも速い。お客さまにも好かれる。僕は心の底から助かっていました。
そのタカシが、インフルエンザで寝込んだ日があります。
たった1日です。
その日の午前中に、3人のお客さまが「もういいです」と言って帰りました。
順番が回らない。誰がどこまで聞いたのか分からない。料金の答えがスタッフごとに微妙に違う。カウンターの空気がじわじわ重くなっていくのが、離れた場所にいた僕にも伝わってきました。
そのとき何を思ったか。正直に書きます。「やっぱりタカシがいないと駄目だな」——そう思ったんですよね。
いま振り返ると、これがいちばんまずい発想でした。
閉店後、ノートを開いたらA4で8ページ
店を閉めてから、机にノートを広げました。
タカシがふだん何を見て、何を聞いて、どういう順番で判断しているのか。思い出せるだけ書き出してみようと。「電源が入らないと言われたら、まず何を確認するのか」「値段を聞かれたとき、どこまで話してから金額を出すのか」。
書いても書いても終わらない。
気づいたらA4で8ページになっていました。
8ページ分の判断を、ひとりの頭の中だけに置いていた。それを本人の努力と気配りだと思って、感謝して済ませていたわけです。会社としては、いつ落ちてもおかしくない橋の上で商売していたようなもの。

あの8ページは、いまこうなっています
本を読んでくれた方から「で、その8ページはどうなったんですか」と聞かれることが何度かありました。せっかくなので現状を書きます。
ひとつ目は受付の順番。何を、どの順で聞くか。「症状→機種→データ→時間→金額」の並びに固定しました。順番が決まっていると、入ったばかりのスタッフでも抜けが出ません。
ふたつ目は料金の伝え方。頭の中の相場ではなく、誰が答えても同じ数字になるように修理料金表を表に出しました。うちのカウンターは、この表をお客さまと一緒に覗き込みながら話します。
三つ目はデータの確認。「中の写真、消えませんか」は毎日聞かれる質問です。ここを人によって言い方を変えると、信頼が一発で崩れる。答えを揃えて、よく出るものはよくある質問にも並べました。
おまけがもうひとつ。部品の在庫です。「あの機種のパネル、まだ在庫あったっけ」を勘で答えていた時期がありました。勘が外れた日は、お客さまに二度足を運ばせてしまう。いまは数を見れば済む話になりました。
紙のノートだったものが、いまは画面の中にあったり、カウンターの裏に貼ってあったり、AIチャットが代わりに答えていたりします。形はずいぶん変わりました。ただ、元をたどれば全部あの夜の8ページ。


書けなかったことも、白状します
ただ、8ページに落とせなかったものもあるんです。
お客さまが「大丈夫です」と言いながら、実はぜんぜん大丈夫じゃない——あの、言葉になっていない部分。声のトーン、視線、端末の置き方。手が震えている方もいます。
ここはまだ、うまく言葉にできていません。
「そこは察しろ」で終わらせたら、それこそ属人化のまま。だから最近は店長たちと、「あのときの、あのお客さんの感じ」を無理やり言葉にする練習をしています。遠回りですが、遠回りしか道が無い気がしています。
もうひとつ残っているのが、値段を言いにくいときの間の取り方。修理代が本体の値打ちに近づいてしまうケースだと、金額をそのまま読み上げるだけでは冷たいんです。買い替えや買取の話をどこで出すか。ここはまだ、人によって差があります。

強い現場は、強い人がいる現場じゃない
本にはこう書きました。強い現場とは強い人がいることではなく、誰がシフトに入っても同じ安心が届くことだと。
いま(2026年時点)、沖縄で8店舗。どの店に入っても同じ答えが返る状態を、僕はまだ100点だと思っていません。60点か、よくて70点くらい。
それでも、あの日3人に帰られた店とは、もう別の店になりました。
ちなみにタカシ(仮名)本人に8ページを見せたら、こう言ったんです。「俺、こんなに考えてました?」(笑
できる人ほど、自分の判断を無自覚にやっている。だから外から引き出す側が要るんですよね。

本の話はBOOKのページにまとめてあります。次の章「属人化は、借金」は、明後日に。
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