スマホ119 社長の手記
社長ブログ視点と、本音と、物語。
修理の話より、その奥の話を。息子の割れたiPhoneを自分で直した日から、沖縄で店を続けてきた僕が、現場で考えたこと・好きなモノづくりのこと・うまくいかなかった日のことまで、飾らずに書き残していきます。
手を動かした分だけ、書ける。
▼ この記事を、ショート漫画にしました(タップで再生・音が出ます)
皆さまこんにちは!スマホ119の富村です^^)
今月は著書『仕組みは、人を信じるために作る』を一章ずつ開いています。今日は第10章、「失敗は、才能がない証拠じゃない」。
第Ⅰ部の最後の章です。ここだけは経営の話がほとんど出てきません。出てくるのは、中学生の僕。

中学生の僕は、音を出したかった
きっかけはYMOでした。
あの音を初めて聴いたとき、頭を殴られたような衝撃だったんですよ。音楽というより、装置から鳴っている未来。あんなものが世の中にあるのかと。
そこからはもう一直線です。お年玉とバイト代を全部つぎ込んでオーディオを集めました。中学生の財布でですよ(笑)。買えないものは自分で作るしかないので、電気回路の本を引っぱり出して、木を切って、箱を組んで、スピーカーを自作しました。
夜中まで、半田ごての匂いのする部屋で。母親には相当うるさがられました汗
で、次に手を出したのがコンピュータでの作曲です。工業高校に入る前、PC-6001という8bitのパソコンを触っていて、これで曲が作れるらしいぞ、と。

頭の中の曲が、どうしても出てこなかった
結果から言いますね。だめでした。
頭の中には、はっきり鳴っている曲があるんです。それを機械に打ち込む。出てくる。……違う。何度やっても、違う。
音の長さを直す。音を足す。減らす。まだ違う。近づいてすらいない気がしてくる。
そのうち僕は結論を出しました。「ああ、自分には音楽の才能がないんだな」と。本気でそう思って、やめました。あれだけ木を切って半田を流した時間ごと、才能がないの一言で片付けたわけです。

あのとき足りなかったのは、たぶん才能じゃない
四十年近く経って、自分の中でようやく整理がついたことがあります。
あのとき足りなかったのは、手順と道具でした。
手順というのは、順番のことです。当時の僕は、頭の中の音を機械に移す道のりを、誰にも教わっていませんでした。何をどの順番でやればいいのか。どこで妥協して、どこで粘るのか。全部ひとりで、真っ暗な中を手さぐりです。
道具のほうも同じで、僕がやりたかったことと、目の前の機械にできることの間には、正直かなりの距離がありました。距離があること自体は機械のせいでも僕のせいでもないのに、当時の僕はその全部を「才能」という一語に押し込んでしまった。
手順を知らない。道具が合っていない。教えてくれる人がいない。——これ、才能の問題じゃないんですよね。当時は分からなかった。

「僕、向いてないみたいです」
この話をなぜ本に書いたか。
店をやっていると、年に何人か、この言葉を聞くからです。「僕、この仕事向いてないみたいです」。だいたい、入って三か月くらいの若い子が、うつむいて言ってきます。
詳しく聞いていくと、中身はいつも似ています。分解でネジを一本なめた。お客さまへの説明でしどろもどろになった。先輩ならすぐ終わる作業に、倍の時間がかかった。それが何回か続いて、心が折れる。
本人の中では、たぶん一本の線が引かれているんですよ。失敗した、だから自分はできない、だから向いていない——という線。しかもその線、驚くほど速く引かれます。三か月どころか、二週間で引いてしまう子もいる。僕がPC-6001の前で引いた線と、太さも角度もそっくりです。
でもね、これ全部、四十年前の僕と同じ構造なんですよ。手順を知らないだけ。道具の使い方をまだ教わっていないだけ。
だから本にも書いた通り、うちは人ではなく仕組みを疑うようにしています。第2章に出てくる、エースの判断をノートに書き出したらA4で8ページになった、あの話の続きですね。手順が紙になって、道具が手に馴染むと、「向いてない」と言っていた子が一か月後には普通に回している。何度も見てきました。

渡したい言葉
もし今日、辞めますと言いに来る子がいたら、僕はこう言うと思います。
それ、才能の話じゃないよ。手順と道具の話だよ、と。
本当に向いていないことも、世の中にはあります。それは否定しません。でも、三か月で分かるほど人間は単純じゃない。三か月で分かるのは、教える側がちゃんと教えられたかどうかだけです。そこは僕らの責任。
音楽を諦めたことを、いまさら後悔はしていません。あのとき箱を組んだ手が、そのままスマホを開ける手になったので。機械の中身を見るのが好きな中学生が、そのまま歳をとっただけの人生です(笑

本の続きが読みたくなった方はBOOKのページをどうぞ。第Ⅰ部はこの第10章で終わりで、来週からは残りの話に入ります。
そして今日も、沖縄県内8店舗(2026年時点)で修理しています。「向いてない」と言いながら手を動かしている若い子もいますので、お近くの店舗で見かけたら、どうか優しくしてやってください^^)
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