スマホ119

社長ブログ

沖縄のスマホ修理のお医者さん

スマホ119 社長の手記

社長ブログ視点と、本音と、物語。

修理の話より、その奥の話を。息子の割れたiPhoneを自分で直した日から、沖縄で店を続けてきた僕が、現場で考えたこと・好きなモノづくりのこと・うまくいかなかった日のことまで、飾らずに書き残していきます。

富村スマホ119 代表 富村 浩樹
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社長の作業机の墨絵イラスト(iPhone修理の道具と3Dプリンター、釣り竿、眠る愛犬) 手を動かした分だけ、書ける。
「やらかしました」の夜|第7章「戻れる」仕組みが、現場を育てる
2026.09.14 0

▼ この記事を、ショート漫画にしました(タップで再生・音が出ます)

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皆さまこんにちは!スマホ119の富村です^^)

本の第Ⅰ部を1章ずつ開いていく月。今日は第7章「戻れる」仕組みが、現場を育てるです。

この章には、入社2週間の新人が出てきます。本の中での名前はユウキ(仮名)。

新人が「やらかしました」と報告に来る場面の4コマ漫画

声が、震えていた

画面交換の作業中に、基板のコネクタを傷つけてしまった。ユウキ(仮名)は作業台から離れて、僕のところまで来て、こう言いました。

「やらかしました」

声が震えていたのを、いまでも覚えています。入って2週間ですよ。まだ工具の名前を覚えている途中の子が、自分の失敗を隠さずに言いに来た。

普通は、ここで詰める上司がいます。なんでそうなったんだ、どこを見てたんだ、と。気持ちは分からなくもない。部品代も飛びますし、何よりお客さまからお預かりした端末ですから。

失敗を詰めても部品は戻らず報告だけが止まることを示す図

詰めても、コネクタは戻らない

でも、冷静に考えてみてください。

詰めたところで、傷ついたコネクタは元に戻りません。戻るものは何もないのに、失うものだけは確実にあります。

次にこの子が失敗したとき、言いに来なくなる。黙って組み直して、そのままお客さまにお渡ししてしまう。それがいちばん怖い。うちの商売でいちばん取り返しがつかないのは、部品の傷ではなく、報告が止まることのほうなんです。

だから僕は、こう考えるようになりました。

完璧な仕組みは、存在しない。だったら最初から、戻れるように作っておくしかない。

転んでも受け止めるセーフティネットのイメージ図

安心して転べる地面を、先に敷く

本の中では「安心して転べる地面」と書きました。

失敗しても取り返しがつく状態を、先に用意しておくということです。予備の部品を切らさない。作業の前に写真を残す。迷ったら手を止めていいと決めておく。手を動かす前に、戻り道のほうを先に引く。

甘やかしとは違いますよ。転ばせないようにするのではなく、転んでも立てるようにする。育つのは、後者だけです。

転ばせない現場は、一見きれいに見えます。ミスの数も少ない。でもそこで育っているのは、挑戦しない癖のほうだったりします。

ちなみにこの地面、放っておくと薄くなります。忙しくなると予備の部品を切らす。時間がないと写真を飛ばす。そして地面が薄くなっている日にかぎって、誰かが転ぶんですよね。だから点検するのは人ではなく、地面のほうです。

転ばせない現場と転んでも立てる現場の違いを示す対比図

同じ言葉が、コードの中にも出てきた

ここからが、今日いちばん書きたかった話。

この数年、僕は自分でシステムを書くようになりました。会社の中で使う道具を、夜な夜な自分で作っています。

そうしたら、妙な癖がつきまして。

戻せない機能は、作らない。

削除ボタンを付けるなら、元に戻す道を必ず一緒に付ける。設定を書き換える処理を作るなら、書き換える前の状態をどこかに残しておく。新しいものを本番に出すときは、出す前に「まずいと分かったら、何分で元に戻せるか」を先に決めておく。

そこが決まっていない機能は、どれだけ便利そうでも出しません。

この世界には「ロールバック」という言葉があるそうです。出したものを、前の状態にまるごと巻き戻すこと。初めてこの言葉を知ったとき、僕がまず思ったのは「あ、これ、うちの作業台でやってるやつだ」でした。

戻せない機能は作らないという開発の癖を示す図

翻訳が、いらなかった

驚いたのは、ここなんです。

現場の話とコードの話を、同じ言葉で説明できてしまった。

2週間目の新人が転んでも戻れる現場と、押したあとで戻せるボタン。片方は人間の話で、片方は機械の話です。分野もまるで違う。それなのに、設計するときに頭の中で考えていることが、一言一句そのままでした。

「壊れることを前提に、戻り道から先に引く」

本を書いていた時点では、ここまでピタッと重なるとは思っていませんでした。修理の現場で新人と向き合いながら身につけた考え方が、そっくりそのままコードの書き方になっていた。この歳になって、こんな発見があるとは(笑

逆に言うと、僕がコードを書けるようになったから現場が良くなったのではなくて、順番は完全に逆でした。現場で先に覚えたことを、あとから画面の中で使い回しているだけです。

現場の設計とコードの設計が同じ言葉で説明できることを示す図

あの夜、言いに来てくれたこと

いま振り返っても、あの夜いちばん価値があったのは、ユウキ(仮名)が黙らなかったことです。傷ついたコネクタより、そっちのほうがずっと大きかった。

言いに来られる現場かどうか。それを決めているのは本人の性格ではなくて、こちらが用意した地面のほうだと思っています。

お客さまにとっての「戻れる地面」も、ちゃんと用意しています。修理のあとに何かあったときのための保証内容がそれです。何かあっても戻せるから、安心して預けられる。考え方は現場とまったく同じでした。

料金は修理料金表から、お近くの店は店舗一覧からどうぞ。

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