スマホ119 社長の手記
社長ブログ視点と、本音と、物語。
修理の話より、その奥の話を。息子の割れたiPhoneを自分で直した日から、沖縄で店を続けてきた僕が、現場で考えたこと・好きなモノづくりのこと・うまくいかなかった日のことまで、飾らずに書き残していきます。
手を動かした分だけ、書ける。
皆さまこんにちは!スマホ119の富村です^^)
昨日の第20章は、「分からない」と言える空気の話でした。今日は第21章「マニュアルは、守らせるものじゃない」の話です。
これまでの回では、手順書の作り方や削り方を書いてきました。今日はその手前の問いにします。そのマニュアルは、いったい誰のために置いてあるのか。
正直に言うと、僕は今でも、新しい紙を作る時は少し身構えます(笑 作った瞬間に、誰かを縛る道具になりかねないからです。だからこそ、置く前に一度立ち止まって考えるようにしています。

この言葉は、口にした瞬間に空気が冷える
マニュアル。
この四文字を出すと、場の温度が少し下がりませんか。縛られる、融通がきかない、誰かの机の上で作られたもの。そういう印象を持つ方は多いと思います。
僕自身、派遣会社の本部から届くマニュアルが苦手な側の人間でした。それでも作ったのは、店が増えるにつれて、同じ案内でも店ごとに伝わり方がばらつき始めたからです。だから自分の店で作ると決めた時、中身より先に気にしたのは「向き」です。
上から下へ押し込む紙にするのか。下から上へ、手を伸ばせる紙にするのか。

同じ紙でも、渡し方で別物になる
たとえば全く同じ内容の紙を、「ここに書いてあるから守って」と渡されるのと、「迷ったらここを見てね」と渡されるのとでは、受け取る側の気持ちはまるで違います。
守る紙は、守れなかったと感じる人を生みます。そう感じた人は、次から紙を開かなくなる。開かれない紙は、ただの置物です。
一方で、戻る場所として置いた紙は、迷った人が自分から開きます。開く人が増えるほど、紙は現場に近づいていく。
人は、命令されたことより、自分で選んで戻った場所のほうを信頼します。迷った時に頼れる場所があると、安心して動けるのです!
だから僕は、「守らせるためのマニュアルは、現場を止める。」と思っています。

職場の備品にも、同じ話がある
紙の置き方は、身近なところで考えると、すぐ見えてきます。
たとえば、備品の置き場所です。壁に「使ったら戻すこと」と貼ってあるより、棚に「迷ったらここ」と写真が貼ってあるほうが、自然と元の場所へ戻ります。
引っ越しや担当替えの引き継ぎノートも同じです。ルールが並んでいるノートより、「ここで迷ったので、こう考えた」と書いてあるノートのほうが、次の人は助かります。
紙の出来栄えより先に、迷った人がそこへ戻れるかどうか。見るべきはそこだと思います。立派な書式よりも、手書きの一行が役に立つ場面は、いくらでもあります。
道を知っていても、不安な時に開ける地図アプリがあるだけで、足取りは軽くなりますよね。マニュアルの役目は、あれにかなり近いと思っています。

「完成させない」と最初に決める
本には、中身をごく少数の要点に絞ったこと、使われ方を見ながら削ったり足したりする前提で作ったことを書きました。
今あらためて思うのは、完成させないと先に決めておく強さです。完成品だと思うと、直す人は遠慮します。育てる前提なら、気づいた人がその場で手を入れられる。現場の口ぐせも、「マニュアル見ろよ」から「今のケース、マニュアルに追加しようか」に変わっていきました。
本には、新しく入った人が自分から読み、気になった所に付箋を貼ってきた場面も出てきます。守られる側だった人が、直す側に回ったんです!あの瞬間のうれしさは、今でもよく覚えています。命令の道具だった紙が、会話のきっかけに変わったのですから。

あなたの職場の紙は、どちら向き?
ここで、問いを一つ置かせてください。
あなたの職場にある手順書や注意書きを、最後に開いたのはいつでしょう。迷った時、真っ先に開く紙はありますか。
もし誰も開いていないなら、中身を疑う前に、向きを疑ってみてください。そして、開いた人の「ここが分かりにくい」を、歓迎する空気があるかどうかも見てみてください。紙が育つかどうかは、そこで決まります。守らせる向きで置かれた紙は、どれだけ正しくても現場には届きにくいものです。

紙一枚の差ではなく、考え方の差
守らせるための紙は、現場を止める。戻るための紙は、現場を前に進める。
見た目はほとんど同じなのに、働きは逆になる。作る側が「これで皆を動かそう」と考えるか、「これで皆が迷わないようにしよう」と考えるか。その違いは、紙の隅々ににじみ出ます。読む人は、案外そこを敏感に感じ取るものです。これは作り方の技術というより、置く人の考え方の違いなのだと思います。
明日と明後日は、週末の趣味の回です。工具棚の前で、水色の小さな自転車を何枚も撮っていた写真から。
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