スマホ119 社長の手記
社長ブログ視点と、本音と、物語。
修理の話より、その奥の話を。息子の割れたiPhoneを自分で直した日から、沖縄で店を続けてきた僕が、現場で考えたこと・好きなモノづくりのこと・うまくいかなかった日のことまで、飾らずに書き残していきます。
手を動かした分だけ、書ける。
皆さまこんにちは!スマホ119の富村です^^)
今日は趣味の回です。木の粉と、半田の焼け跡が写った二日間の写真です。
6年前の10月末。2020年10月30日と31日です。

一枚目は、小さなCNCが木の板を削っている、まさにその瞬間。
青いフレームの機械の真ん中で、銀色のモーターを載せた軸が、板の上にぴたっと降りています。板は薄い茶色で、右のふちを銀色のねじ式のクランプで押さえてある。板の手前には、小さな穴がひとつ。機械の奥には、赤い物と配線がちらちら見えます。
削っている最中を、画面に収めている。刃が板に降りた瞬間を逃さない位置で撮られた一枚です。
撮影は、日付が変わってすぐの深夜0時台。ほかにも、この機械を透明な箱で囲んで動かしている写真が残っていました。
CNCは、一般に、板をしっかり固定して、刃の位置を決めて、それから初めて削り始める機械です。動き出してからやり直しがきかない分、動かす前の支度が長い。写真のクランプは、その支度の一部が写っているわけですね。
ちなみに、スマホの写真アプリで「工具」「木」などと打つと、こういう手作業の日がまとめて出てきます。僕のアルバムは、食べ物と海と、機械と部品でできている。改めて、偏っています(笑
削り出した、円の模様
二枚目は、削り終わった板の接写。

丸い輪の中に、真ん中の小さな円と、そこから外へ伸びる六つのしきりのような線。車輪のようにも見えます。細い溝で縁取られていて、中の部分は削り残してある。外側の輪の太さと、内側のしきりの太さが、ほぼ同じ幅にそろっています。板の表面の繊維や、うっすら残った汚れの粒までが見える近さです。
これが何かの部品なのか、試し彫りなのかは、写真だけでは分かりません。ただ、線が一本もぶれていないことだけは、はっきり分かります。
英字を彫った板
ここから日付が変わって、10月31日の写真になります。

三枚目は、板に英字を彫って、そのまわりに細長い溝をぐるりとU字に巡らせたもの。溝の内側に、丸い穴が六つ空いています。板の表面には、鉛筆で引いた細い線が何本も残っていて、何本も重なって、板の上に地図のような模様を作っています。手が板の端を支えていて、画面の左下に指が入っています。
彫られている英字の綴りは、ここには書きません。何を作ろうとしていたのか、写真だけでは分からないからです。
未明の撮影です。外が暗いうちに、ひとつ彫り上げてしまう時間帯。
彫り終わった板に、文字と溝がくっきり残っている。この写真を見ていると、ここまで来るのに、削る前の支度と、削っている時間と、削ったあとの確認と、順番にいくつも段階があったんだろうな、と想像が働きます。
板の上のナットと針金
それから7分ほどで、板の上の景色が一変します。

さっきの溝のU字に沿って、六角ナットがいくつも置かれています。ナットのあいだを、赤みのある銅色の針金が、同じU字の形に曲げて通されている。板の下には、緑色のマットが敷いてあります。手が板の左下を押さえています。
ナットと針金は、まだ固定されていない。置いて、位置を見ているところです。ナットが並ぶ間隔は、ほぼ同じ。針金の曲がりも、きれいな半円。
はんだ付けの跡
次の写真は、固定のあと。

針金が溝に沿って通され、ところどころが半田で止められています。接合部のまわりは焼けて、茶色やオレンジの跡が点々と残っている。フラックスで焼けた跡ですね。丸い金属の頭が、上下二列に三つずつ並んでいます。針金の端は、板の左の穴にくぐらせてあります。
最後の一枚は、板全体を引きで撮ったもの。

ナットやネジの頭、金属の部品が板の上に取り付けられて、ところどころに焼けた跡。上のほうには、まだ取り付けていないナットが二つ、ぽつんと残っています。
写真の時刻は、10月31日の明け方4時半から5時20分まで。一時間足らずで、彫った板が、ナットと針金の付いた板に変わっています。この日の写真に、完成品は写っていません。残っているのは、削る、彫る、置く、曲げる、止める。その過程の写真だけです。
足すものと、削るもの
ここまで見返して、思いました。
僕は、足して作る物と、削って作る物の、両方が好きなんだな。
3Dプリンターは、足していく機械です。3Dプリンターの話は前に書きました。CNCは、その逆。板から余計な部分を削り落として、形を取り出していく。同じ「モノづくり」でも、手の動かし方がまるで違います。
出る物も違います。CNCは削りかすが出る。3Dプリンターは、削りかすが出ない代わりに、積み上げる時間がかかる。出る物の違いも、そのまま性格の違いです。
足すほうは、待つ時間が長い。削るほうは、一度削ったら戻せない。性格の違う二つの機械を、どちらも触っている。今の自分から見ても、ちょっと笑えます。
試して、直して、また試す
写真を順番に追うと、板は、板のままで、少しずつ形を変えています。
彫る。溝に沿ってナットを置く。針金を曲げて通す。半田で止める。その途中の一枚一枚が、「置いてみて、様子を見て、次の手を決める」という往復でできている。
第11章「現場は、最高の教科書」で書いた、拾う、直す、戻す、またズレたらまた拾う、という流れと、同じ形をしている気がします。机の上でも、現場でも、最初から完成形が見えている人はいない。試して、確かめて、直す。それを何度も繰り返した人の手元に、結局いい形が残る。
完成品が写っていないぶん、途中の一枚一枚に目が留まります。
それにしても、六年前の自分の手元を、画面の中でこんなに近くで見られるのは、不思議な感じです。指の位置、板の傾き、緑のマットのしわ。完成品が無い分、見る側の目が、途中の一つ一つに留まります。完成品だけを見ていたら、きっと素通りしていた細部です。
手を動かして試す性分は、昔からそう変わらないようです。写真を見ていると、六年前の自分に「いいね、それ」と声をかけたくなります。
写真が語ること、語らないこと
今日は、写っている物の話に徹しました。完成品の名前も、板の用途も、彫った言葉の意味も、写真だけでは分からないからです。
分からないことを、分からないと言える。これは、本の中で繰り返し書いてきたことでもあります。
過程の写真には、見返す側に考える余白をくれる力があります。何ができたのかを知らないからこそ、次はこうするのかな、と先を読みたくなる。ミステリーの途中のページを眺めているようで、飽きません。
スマホの中に眠っている写真は、見返すたびに、別の話を連れてきてくれます。
スマホの中の写真が気になる方は、お近くの店舗へお気軽にどうぞ。
次回は、第20章「「分からない」と言える空気は、設計できる」です。
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