スマホ119

社長ブログ

沖縄のスマホ修理のお医者さん

スマホ119 社長の手記

社長ブログ視点と、本音と、物語。

修理の話より、その奥の話を。息子の割れたiPhoneを自分で直した日から、沖縄で店を続けてきた僕が、現場で考えたこと・好きなモノづくりのこと・うまくいかなかった日のことまで、飾らずに書き残していきます。

富村スマホ119 代表 富村 浩樹
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社長の作業机の墨絵イラスト(iPhone修理の道具と3Dプリンター、釣り竿、眠る愛犬) 手を動かした分だけ、書ける。
2年前の2月の夜、苔と流木の水槽の前に立った|足すより、引いて見せる|社長ブログ
2026.10.28 0

皆さまこんにちは!スマホ119の富村です^^)

夜も遅く、部屋の灯りを落とした中で、水槽の棚の前に立っていました。

2年前の2月18日、宜野湾です。ついているのは水槽の照明だけ。紫がかった光の中に、ガラスの水槽が何段も並んでいました。

流木と苔をレイアウトした水槽

真ん中には、苔をまとった流木のアーチ。

今日は趣味の回。苔と流木の水槽の話です。

夜の部屋で、そこだけ水の中の昼

夜中の水槽は、昼に見るのとまるで別物です。まわりが暗いぶん、水の中の緑だけが浮かび上がる。棚の一角だけが、昼のままになっているような感じです。

照明の色は、ほんのり紫がかったピンク。水草用のライトには、赤と青の光を混ぜて、人の目には紫っぽく見える物があります。植物は赤と青の光をよく使うので、そこを強めてあるんですね。

水槽棚の全体と照明

部屋が静かだと、エアポンプの小さな音がよく聞こえます。ぶくぶく、こぽこぽ。昼間は気にもならない音が、夜になると急に主役になる。あの音を聞きながら、しばらく棚の前でぼんやりしていました。

2月の宜野湾は、プロ野球のキャンプの季節でもあります。昼間は球場のまわりがにぎやかで、ユニフォーム姿のファンが行き来する。沖縄の2月は、あちこちの町に球団がやってくる、ちょっとしたお祭りの月です。そのにぎやかな昼と、静かな夜の水槽の前。同じ町の同じ日でも、時間が変わればまるで別の場所です。

苔と流木と石だけ

真ん中の水槽の前に、もう一度立ちました。

苔・流木と石を組んだ水槽

入っているのは、流木が一本、石が数個、苔、シダ、浮き草。底には細かい砂利。

これだけ!

両手の指で数えられるくらいです。苔と水草の緑、流木の茶色、それに照明の紫。色の数まで少ない水槽でした。

水草で埋めつくす水槽もありますが、これは逆です。流木のアーチの下が、ぽっかり空けてある。奥の壁も、ガラスのきわも、ほとんど何も足されていません。

もしこの空いた場所に置物をもうひとつ足したら、流木の線はきっと死んでしまいます。足さずに空けておくから、線が生きる。足さないほうが、かえって目が止まります。

流木の形は、二つと同じ物がありません。工業製品と違って、寸法をそろえることができない。だからこそ、置いてみて初めて分かることが多いんです。図面どおりにいかない素材を、どう生かすか。モノづくりが好きな僕からすると、そこが逆に面白いところです。

見た目は静かでも、ここまでには時間がかかる。苔が石や流木になじむのも、水草が根を張るのも、何週間、何か月の話です。水槽は、待つことの多い趣味です。

骨組みを先に決める

こういう水槽は、流木と石を「骨組み」にして、先に置き場所を決めてから水草を植えていく流れがよく知られています。

骨組みが決まると、あとは足りない所を少しずつ埋めるだけ。逆に、水草から先に植えると、どこに何があるのか分からなくなっていきます。

シダの仲間には、砂に植えずに、流木や石にくっつけて育てる物がたくさんあります。土の上ではなく、木の上に根を張る。陸の上ではなかなか見ない育ち方で、ここが面白いところです。

あの夜は、水槽の前で、しばらく何もせずに眺めていました。紫の光の中で、流木のまわりだけが静かに浮かんで見えた。

足すより、減らすほうが難しい。あの棚の前に立っていると、そのことがよく分かる気がしました。

水草の下に、赤紫の小さなカニ

隣の水槽は、水草がわさわさと茂っていました。

水草の下の砂利の上に、赤紫の小さなカニの形が見える

黄緑色の細い葉が重なって、水面まで伸びている。葉の先のほうは、ほんのり橙。同じ水草でも、光の当たり方で色が違います。

その下の茶色い砂利の上に、赤紫の小さなカニがいました。脚を左右に広げて、ぴたりと止まっています。

水草の下の砂利の上に、赤紫の小さなカニの形が見える(別の1枚)

水草の影から、砂利の上へ、そろりと出てきたところ。こういう瞬間は、待っていて来るものではありません。ぼんやり眺めていたら、向こうから出てきてくれた。夜の水槽の、ちょっとしたごほうびです。

小さなカニやエビにとっては、石や流木の陰がそのまま隠れ家です。物が少ない水槽でも、隠れる場所がちゃんとあれば、こうして出てきてくれる。

沖縄で水槽というと、美ら海水族館の大きな黒潮の海を思い浮かべる人が多いと思います。ジンベエザメが泳ぐ、あの大水槽です。あちらは海の景色を丸ごと切り取った水槽で、こちらは苔と流木の小さな森。大きさはまるで違っても、ガラスの向こうに一つの世界を作る、という点では同じです。

多すぎず、なさすぎず。そのさじ加減が、いちばん難しい。

一列に並んだ棚

最後に、少し下がって棚全体を眺めました。

棚に並ぶ水槽

水槽が五つほど、すき間なく一列に並んでいました。

きちんと並んだ棚は、それだけで「ここは手が入っている」と伝えてくれます。

同じ照明、同じ大きさのガラスでも、入れる物が違えば、緑の育ち方も水の色も変わってくる。一本ずつ見るより、こうして並べて眺めたほうが、その違いがよく分かります。

一本ずつに、ちゃんと性格がある。人の集まる店と、少し似ています。

水の中の小さな景色は、何度眺めても飽きないものです。

足すより、引いて見せる

流木、石、苔、シダ。数えられるくらいの物しか入っていないのに、見ていて飽きない。物の数と見ごたえは、比べてみると案外つり合わないものです。

水槽の話になると、僕はやたら饒舌になりますね(笑

多くの物を並べるより、少ない物を、余白と一緒に見せる。水槽の良し悪しって、そこで決まるんじゃないか、と素人ながらに思います。

それに、水の中は正直です。物を足しすぎれば、水はすぐに悪くなる。無理をした環境は、すぐ結果に出ます。

そして水槽が調子を崩したとき、責める相手は魚ではありません。水と、置き方と、環境です。魚を叱っても、何も変わらない。水を見直すしかない。

これって、現場も同じだと思うんです。

人が失敗したとき、まず疑うのは人じゃなくて、置き方と流れ。環境が整えば、人を責めずに済む。第Ⅱ部で書いてきたのは、人の頑張りを増やす話ではなく、環境を整える話でした。

足すより、引く。足りない物を探す前に、余計な物を外してみる。

新しい決まりを一つ足す前に、もう要らなくなった決まりを一つ外す。棚の上の物を一つ減らす。それだけで、動きやすくなる現場はけっこうあります。

新しいことを試すのが好きな僕は、どうしても足すほうへ手が伸びます。だからこそ、引くほうを意識していたい。

スマホの中身も、同じです。残す物を決めて、あとは引く。そのほうが、開くたびに探し物をしなくて済みます。

あの夜の流木のアーチも、まわりが静かだったから、今でも目に残っているんだと思います。2年たった今も、紫の光の中の緑だけは、はっきり思い出せます。

水槽の話は、前にも事務所のグッピーとエビの水槽の回や、メダカを飼い始めた回で書いています。今日は、夜中の棚の前で眺めた水の景色の話でした。

さて、明日は第24章「早く回る現場ほど、実はゆっくりしている」です。第Ⅱ部の最終章になります。

スマホの中の古い写真が気になる方は、お近くの店舗へお気軽にどうぞ。

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