スマホ119 専務の現場ノート
専務ブログ現場から、次の119へ。
壊れたiPhoneを自分で直したあの日から、修理ひと筋で11年。いまは専務として全店舗の現場を回り、仲間の技術と心に火をつけるのが仕事です。スマホ119を責任持って引っ張っていく覚悟と、現場で起きているリアルを、そのまま書いていきます。
- 修理歴 11年たたき上げ
- 全 8 店舗現場を統括
- 育てる仲間と技術
背中で教えて、言葉で渡す。
こんにちは、専務の富村レオです(^^)
据置図鑑⑩。今日は3DO REALをやります。
ゲーム機の歴史をまとめた記事だと、たいてい「高すぎて負けた機械」の一行で片付けられている。もったいないんですよ、これ。この機械がやろうとしたことは、当時よりも今のほうがよっぽど分かりやすい。

①あの頃 ― ゲーム機ではなく、家電として売られた
発売は1994年3月20日。作ったのは松下電器で、型番はFZ-1。
価格は発表の時点で79,800円、実際に店頭に並んだのが54,800円でした。消費税が3%の時代で、当時は税別表示が通例です。同じ年の11月11日には後継のREAL II(FZ-10)が44,800円、10月1日には三洋の3DO TRYが54,800円で出ています。
僕は1997年12月生まれなので、これも生まれる3年前の機械。触ったのはずっと後になってからです。
で、面白いのが売り方。これ、ゲーム機として売っていないんですよね。インタラクティブ・マルチプレイヤーという肩書きの、家電。テレビやビデオデッキの隣に置く箱、という顔で店頭に並びました。

②遊んでた ― と書いたら嘘になるので、正直に
生まれる前の機械に「当時ハマった」と書くのは違うので、そこは正直にいきます。僕にとっては完全に図鑑の中の機械です。
それでもソフトの並びは、今あらためて見ると異様。アーケードの対戦格闘だったスーパーストリートファイターII X、ホラーアドベンチャーのDの食卓、ポリスノーツ、海外産のアローン イン ザ ダーク。
ジャンルはバラバラなのに、共通しているのが「CDの容量と映像で見せる」という方向。1994年の時点でこの並びだったのは、中身のチップを見ると納得がいきます。
③開けてみる ― 中身より、作りの素直さに驚く
CPUは32bit RISCのARM60が12.5MHz。グラフィック側にClioというチップを積んでいて、当時のIBM-PCより動画とスプライトが強い構成でした。CD-ROMドライブ搭載、電源は内蔵。
ただ、僕が開けて毎回思うのは性能の話じゃないんです。
重い。堅い。ネジがそろっている。
基板とドライブが素直に分かれて、順番どおりに外れる。ゲーム機というより、ビデオデッキを開けている感覚に近いんですよ。家電メーカーが自社の工場で作った箱、という手触りがはっきりある。

そして本当の主役は、たぶん中身より売り方でした。米3DO社は自社でハードを作らず、規格だけをライセンスする。松下、三洋、LG。各社が自分の工場で自分の3DOを作る。ソフトのライセンス料はほぼ取らず、ハードで稼ぐ。
ハードは各社が自由に作れ、規格だけ共通にする。これ、今のスマホの世界そのままじゃないですか。
④今、壊れるとこ
症状はほぼ一本道です。
- ディスクを読まない。ピックアップの劣化、レーザー出力の低下、レンズの汚れ。この3つが重なって出ます
- 電源部の電解コンデンサの液漏れ。電源が入らない、入ってもすぐ落ちる
- ローディングとトレイのグリス固着。ディスクは回るのに認識しない、トレイが渋い
作りが素直なぶん、壊れ方も素直。裏を返すと、30年経った今、いちばん開けやすくていちばん直しやすい据置機のひとつです。ここは本当に家電屋の功績だと思っています。

⑤改造メモ ― ひとつだけ、強く止めます
やることは地味な整備が中心。
- ピックアップのレンズを無水エタノールで清掃
- 電解コンデンサの交換。液漏れの跡は必ず洗浄してから、パターンの導通を確認
- ローディング機構のグリス塗り直し
- 出力まわりの見直し
で、ここからが今日いちばん言いたいところ。
基板の半固定抵抗を回してレーザー出力を上げる「調整」。あれはやらないでください。
ネットに手順が転がっているので手が伸びる気持ちは分かります。読まないディスクを前にすると、誰でも一回は考える。でもあれ、一度上げたら素子の寿命を確実に削る片道切符なんですよ。清掃と機構整備を全部やり切ったあとの最後の手段で、うちも原則やりません。
回す前に、持って来てほしいです。

負けた機械のほうが、長生きする
販売台数の数字は資料によってばらつくので、ここでは出しません。はっきりしているのは、勝てなかったということだけ。
ただ、間違っていたのは思想ではなく、タイミングと値札だったと僕は思っています。規格を共有して各社が作る、という発想そのものは30年後に当たり前になった。
そして皮肉なことに、その家電屋の設計思想のおかげで、この機械はいちばん直しやすい箱として残ったわけです。負けた側が、いちばん長生きする。図鑑をやっていると、これ本当によく起きるんですよね。

光学ドライブが読まない、電源が入らない、ファンがうるさい。この順番、PS4やPS5でもまったく同じです。PS修理のページも見てみてください。料金の目安は修理料金表に載せています。
1994年の家電を開ける手つきと、今日のiPhoneを開ける手つきは同じ。ネジを数えて、順番を覚えて、戻せるようにバラす。それだけです(^^)
次回は据置図鑑⑪、PC-FX。タワー型という異端の話をします!
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