スマホ119 社長の手記
社長ブログ視点と、本音と、物語。
修理の話より、その奥の話を。息子の割れたiPhoneを自分で直した日から、沖縄で店を続けてきた僕が、現場で考えたこと・好きなモノづくりのこと・うまくいかなかった日のことまで、飾らずに書き残していきます。
手を動かした分だけ、書ける。
皆さまこんにちは!スマホ119の富村です^^)
曇り空の砂浜に、竿を一本立てました。
4年前の5月10日。場所は名護市の砂浜です。

海は凪いでいて、空は一面の薄い雲でした。
今日は趣味の回。竿と、魚と、ラーメンと、夕焼けと、モカの一日です。
5月の名護、曇りの浜
沖縄の5月は、梅雨の季節です。平年だと、連休が明けたころに梅雨入りして、6月の下旬まで雨の日が続く。本土より、ひと月ほど早い梅雨です。
この日は降らずに、薄い雲が一面にかかったままでした。梅雨どきの沖縄では、こういう「降りそうで降らない日」がけっこうあります。日差しが弱いぶん、浜にいても楽な日です。
それに2022年の5月は、沖縄が本土に復帰して、ちょうど50年の年でした。記念の日の5月15日は、この5日後です。あのころはテレビでも新聞でも、復帰50年の話がよく出ていました。
名護は、北のヤンバルへ向かう入口の町です。那覇のほうから車で北へ上がって、名護の海が見えてくると、ヤンバルはもうすぐそこ。北の森と海が近づいてきた合図です。この日は、その入口の町の浜で、竿を立てたまま一日をのんびり過ごしました。
夕方、竿の先に魚
竿を立てて、少し離れて待ちました。夕方、竿の先に魚が一匹ぶら下がりました。

黄みがかったオレンジ色の魚でした。
曇りの日の釣りは、悪くないと言われます。日差しが強いと魚が警戒して深い所へ下がる、日が陰ると浅い所まで寄ってくる、という話はよく聞きます。夕方が近づくと期待が高まるのも、釣りをする人なら同じだと思います。
竿を立てておいて、少し離れて待つ。砂浜の釣りは、そういう過ごし方ができるのがいいところです。磯のように足場を気にしなくていいので、海を眺めている時間が長くなります。
ただ、砂は道具の大敵でもあります。リールに砂が噛むと、巻くたびにじゃりじゃりと嫌な音がする。竿を砂の上に寝かせず、立てておくのが砂浜の基本です。
竿の先に魚が見えた瞬間は、何年たっても同じようにうれしいものです。大きくても小さくても、竿が曲がると、待っていた時間が全部報われた気がします。釣りが好きな理由は、結局そこなんだと思います。
メスティンで、インスタントのラーメン
日が傾いてきたころ、砂の上に小さなコンロを置いて、お湯を沸かしました。

角の丸いメスティンに、インスタントの麺。箸を二本、ふちに立てかけて。
これが、この日の晩ごはんです。
大きな鍋も、フライパンも、調味料の瓶もありません。コンロと、ガス缶と、メスティンと、箸。それだけで晩ごはんが成立します。
海を見ながら、湯気の立つ麺をすする。手の込んだ料理ではないのに、外で食べる一杯は、どうしてこうも特別に感じるんでしょうね(笑
家の台所なら五分で終わる一食です。それが浜の上だと、お湯が沸くのを待つ時間から、もう楽しい。外ごはんの良さは、料理そのものより、この待ち時間にあるのかもしれません。
金色の夕方
やがて、空の色ががらっと変わりました。

雲の切れ間から日が差して、雲の縁だけが白く光る。海の上に、金色の道ができていました。浜のずっと遠くには、人が一人。
昼の曇りの灰色から、金色の夕方へ。同じ浜に腰を据えていると、空のほうが勝手に景色を変えてくれます。
曇りの日の夕方は、雲が厚いぶん、切れ間から出た光がよけいに際立ちます。晴れた日の夕焼けとは、また違う派手さです。
5月の沖縄は日が長くて、日の入りは夜の7時を回ってから。夕方から出かけても、日の入りまで浜でゆっくり過ごせる季節です。暗くなるまでの時間がたっぷりあるのが、この時期の外遊びのいいところです。
竿を立てた所から、魚がぶら下がった所、ラーメンを作った所、夕焼けまで。この日は、ほとんど動いていません。
釣れても釣れなくても、日は沈む。当たり前のことですが、浜にいると、それがよく分かります。
消波ブロックのくぼみに、モカ
同じころ、モカは消波ブロックのくぼみに顔を突っ込んでいました。

後ろ足を踏ん張って、全身で前のめりです。
犬にとっては、竿よりラーメンより、こっちのほうがずっと大事なんでしょうね(笑
浜に犬を連れて行くと、人が気にしない所ばかり気にします。草のにおい、岩のすき間、流れついた物。人が景色を見ている間、犬は足元を見ている。
ブロックの上は角があって、すき間も深いので、目を離さないようにしていたい所です。
砂浜は、晴れた日の昼には砂がかなり熱くなります。犬は靴を履いていないので、足の裏で直に受けてしまう。曇りの日は、そのぶん犬にもやさしい日です。
今思い出しても、あの日のモカの後ろ姿は、なんだか頼もしかった。浜でいちばん真剣だったのは、たぶんモカです。竿とコンロとモカ。浜の上の荷物は少なくても、にぎやかな一日でした。
「最低ラインの型」を持っておく
この日の道具を数えると、とても少ないんです。竿と、小さなコンロと、メスティン。
お湯さえ沸けば、晩ごはんが成立する。火と水と麺があれば、場所を選ばない。
必要な物は、火、お湯、麺、箸。しかも箸は、二本そろっていないと困ります(笑
釣りやキャンプの道具は、凝り始めると際限なく増えていきます。だからこそ、これだけあれば一日もつ、という組み合わせを一度決めておくと、出かける前の迷いがぐっと減ります。
この「最低ラインの型」を持っていると、釣れても釣れなくても動けるんです。魚が来なくても、ごはんは食べられる。だから、焦って場所を変えたり、無理をしたりしなくて済む。
これ、仕事の現場でも同じだと思っています。
忙しい日でも、人が足りない日でも、「最低でもここまでは必ず回る」という一番細い流れを、先に決めておく。細くていい。太くしなくていい。それがあるだけで、判断が急に静かになります。
全部を完璧に回そうとすると、一つ崩れただけで全部が止まってしまう。細い型が一本あれば、崩れた日でもそこまでは戻れます。
戻れる場所がある、というだけで、人は落ち着いて動けるものです。
最低ラインがあるから、その上に何を足してもいい。釣りの結果が足し算なら、ラーメンは土台です。土台が決まっていると、足し算は気楽になります。
第Ⅱ部で、いろいろな仕組みの話を書いてきました。その下にあるのは、結局この、一番細い型の話です。
メスティンの話は、前にもソロキャンプの回で書きました。釣りの話は、釣りの回に。
曇りの午後から、金色の夕方まで。動かずにいた浜の一日でした。
お湯が沸けば何とかなる。外で過ごす日には、その安心感がいちばんの装備なのかもしれない、と今は思います。
さて、明日は、冬の砂浜にテントを張った日の話で、10月の最後です。
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